拍手まとめ10



《旧作×霖之助》



エレンと霖之助

「彼女にプロポーズと一緒にプレゼント~?ステキだわぁ! えっと…じゃぁこれはどぉ? 指輪! ふわふわでかわいいのが私に似てる~v え~? これ高いかなぁ? だって考えてみて? 女の子っていうのはぁ、イベント事にとっても敏感なのぉ。だから、結婚して、ながぁい間経ってから『プロポーズのときのプレゼント、正直気に入らないものだったわ』なんて言われちゃったらぁ…悲しいのは貴方ですよぉ? ……え?お買い上げぇ?うわぁvありがとぉv確かに代金ねぇ。また何かプレゼントで迷ったら、ぜひエレンのふわふわのお店をよろしくぅ~」

 カランカランと扉が閉まる。
 この店の主人。エレン…否、霖之助は大きくため息を吐いた。

「…なんで僕の店の中で君が店を開いてるんだ」
「え~?だって霊夢がぁ」

 エレンはたどたどしく話す。内容は以前から自分の店が欲しいと思っていた矢先、某ストロベリーな教授の力により一時期エレンの店は存在した。博麗神社の中に。
 それを家主である霊夢が許すはずもなく、無理やり追い出されたのだ。そして吐き捨てるように言ったらしい。

『そんなに店が欲しいなら香霖堂っていうやってるのかやってないのかよく分からない店があるからそっちでして!』

と…。

 つまり、霊夢はめんどくさいモノを霖之助に押し付けたのだ。もちろん、霖之助にも拒否する権利はある………はず。

「出て行ってくれ」
「なんでぇ? いいじゃない」

 愛猫ソクラテツを抱えながら首を傾ける。まるで霖之助の話を分かっていないようだ。
 そんなエレンに霖之助は半ば怒鳴るように言いつける。

「ここは僕の店だ! 君が勝手に店を開いちゃ困るんだよ」
「そっかぁ…。 わかったわ。 出て行く…。でもぉ、今日ここを追い出されると泊まるところがないしぃ…」

 霖之助の意図が分かったのか、しぶしぶ要求を受け入れた。しかし、外はオレンジ色の空。カラスまで鳴きだし夜が近いことを知らせていた。
 夜の幻想郷に放り出されては、いくらエレンでも平穏無事に朝を迎えることは難しいだろう。
 ジッと、まるで「見殺しにするの?」と言いたげな目は、霖之助も手を上げた。

「あー…分かった分かった。今日はここに泊まってもいい。 ただし!明日になったらちゃんと出て行ってくれ」
「はぁい」

 にっこりと頬を緩めカバンを床に置く。調子よく「晩ご飯は何にする?」なんて声をかけられ、思わず霖之助は大きくため息を吐いた。



 そして次の日…
 カランカランと扉のカウベルが鳴る。作業をしていたエレンはくるりとお客の方を向くと、にこりと微笑をこぼしながら言った。

「はーい♪ 今日は何のご用で~?」

 あいにく、訪れたのは客ではなく買う気の全くない少女だった。しかし、エレンの顔を見るなり顔を引き付けながらすぐに出て行ってしまった。
 不思議そうに出て行った少女を見送っていたエレンに霖之助が尋ねる。

「なんでまだ君がいるんだ…」
「えー…? 何の話だっけ?」

 まるで忘れているエレンに、先ほどの少女と同じように顔を引き付けながら霖之助がさらに尋ねる。

「君本気で言っているのかい?」
「なんのことぉ?」
「だ、ダメだこりゃ…」

 香霖堂がふわふわ堂に変わるのは時間の問題である。


ちなみにエレンの元ネタの原作は見ていない。怒らないでくれ。







理香子と霖之助

「気に食わないわね。この商品…」
「何…?」

 紫色の髪をなびかせる女性は、幻想郷では珍しくメガネを愛用していた。真っ白な白衣をこれ見よがしに翻しながら、香霖堂に並んでいる魔法道具にケチを付ける。
 いくら客であっても、その言葉は作った主である霖之助の眉間に皺を寄せるに十分な理由だった。

「なぜ魔法を使おうとする? 道具に魔法を込めて何になる? 今幻想郷に必要なのは科学!! それが分からないとはなんとも嘆かわしいかぎりよ」

 彼女、朝倉理香子は幻想郷では珍しい科学推奨派。背中に背負われている飛行装置…ロケットがそれを明白にしていた。
 理香子のロケットを見て、霖之助はすぐにそのことを理解した。しかし、道具を理解しただけであって魔法否定を理解したわけではない。

「言わせて貰うが、君たちが行う弾幕ごっこは魔法を魅せることに意味を持っている。君の言うことは、自分自身への否定とも取れるがね?」
「私は魔法よりも科学が有能だと言っているだけ。その証拠に私はロケットで空を飛んでいるわ」

 その言葉に霖之助は思わず鼻で笑ってしまった。

「ふっ…。 それはどうかな? 君のそのロケットだけど、どう見てもただの火炎放射器にしか見えないが…。飛ぶ力は自分の魔法だね」
「ぐぅっ!! なぜそれをっ!!?」
「あいにく僕の能力は見るだけで道具の名前を当てるんだ。君の苦し紛れのウソなんてお見通しさ」

 見破られた真実に理香子は苦虫を噛み締めたように顔を歪める。そして、フンっとそっぽを向いて苦し紛れに口を開いた。

「まだロケットで飛ぶところまで私の科学の力は追いついていないだけ! そのうち貴方のこの店もロケットを付けてあげてもいいわ」
「お断りだ。さ、商品に文句を言いに来ただけなら帰っておくれ」
「っ! 私はちゃんとした客よ。こ…この…『小6理科』を買いにきた…!」

 理香子が指した先の本棚には、『小1りか』から『小4理科』、とんで『小6理科』と書かれた本が並べられていた。

「ふん。この指導書は『小6理科』の下の巻…『小5理科』があってやっと全巻揃うもの…。単体で売ることはできないよ」

 売る気がないのか、ひどく霖之助の態度は横柄だった。否、本当に売る気がないのだが…。
 そんな霖之助の態度を見越したように、理香子の態度も横柄だった。まるで自分の方が優位であると誇示するように、どこに持っていたのか白衣の内側からとある一冊を取り出した。

「ふふっ『小5理科』なら…ここに…!」
「!!」
「とある人物にもらったこの本…これが揃うことで『小学生理科シリーズ』が手に入るのね。そうね…じゃあ一回『小5理科』を売るわ。そしてその後に全6巻のこの教材を買わせて貰う。どう?」

 霖之助の顔が、先ほどの理香子のように苦々しく歪む。『やられた…!』とでも言う顔。引きつる頬を隠しながら、平穏を保ちながら口を開いた。

「……ちゃんと代金を持っているんだろうね」
「もちろん」
「わかった。買おう」
「やった!じゃあ即……って、なんで『小学生理科シリーズ』をしまおうとするの?」

 霖之助は、理香子から受け取った『小5理科』を今まであった5冊と一緒にまとめた。それを理香子に受け渡し、その分の代金を頂戴すれば何も言われなかっただろうが、霖之助は計6冊となった『小学生理科シリーズ』を勘定台の裏に置いてしまったのだ。そしてあろうこ とか、小型犬のようにキャンキャン喚く理香子を尻目に、したり顔で霖之助は『小5理科』をパラパラと開いて読み始める。

 そして言った。

「今この時間より、この6冊は僕のものだ。僕がじっくりと読んでから君に売るよ」
「なっ!なんですって?!」

 鼻歌を歌いだしそうな霖之助は、悠々と『小5理科』を読む。まるで理香子などいないかのように気にせず。
そのことに腹が立った理香子はプルプルと震えながら喚いた。それはさしずめ逆毛の立った子犬のよう。

「このインチキ店主! 返せ! 小5理科返せ!」
「いわばこの本は君から僕が買ったんだ。今更そんなこと言われてもね…」
「キーーー!!なんていう屁理屈!!もう怒った!科学の力今見せてやるっ!!」
「ロケットも飛ばせることもできない科学者に何ができるんだか…」

 いけしゃあしゃあと言う霖之助に更に腹が立った理香子は、ロケットの噴射口を霖之助に向けた。
 理香子の目はキラリと光り、まるで何かを狙い打つような気迫。さすがの霖之助も理香子の異変に気が付いた。

「貴方は見たんでしょう? 自分の能力で…これはロケットではなく火炎放射器だってね」
「…………まさか…」
「そのまさかだ!炭になれぇ!!」

 霖之助は黒くなった。
 その後、教科書までも炭になったことに後悔する理香子だった。




小5理科で大喜びだった理香子には高い科学はまだ会得してないのでは?という考えの下作ったss。







夢美と霖之助

 赤いマントを翻しながら、勘定台の向こうで本を読み漁っていた霖之助に夢美は言った。

「もしも私が貴方の求める場所から来た人間って言ったらどうする?」
「なんだって…?」

 霖之助が求める場所。それは、外の世界。霖之助がそれに憧れているという噂を聞きつけた夢美は、ちょっとした興味によりその知識を見せ付けに来たのだ。
 案の定食いかかった霖之助に、夢美の口はニヤリとつりあがった。優越感に浸りながら、夢美は短い髪をわざとらしくなびかせる。

「だから貴方が知りたいことなんて沢山知っているわ」
「っ! じゃあこのコンピュータの使い方を知っているんだね!?」

 霖之助が取り出したのは大きなデスクトップが重々しいパソコンだった。
 前々から使い方を知りたかった霖之助の目は、夢美に期待のまなざしを送っている。

「ええもちろん。でもこれ私が使っているのより大分古くて…えっと…スイッチってどこだっけ…? これかしら…?」

 夢美は不器用にパソコンをなぞると、デスクトップの裏側をジッと見つめたり、キーボードを裏返してみたりと、いわば『モタモタ』している。
 その姿は挙動不審。だんだんと顔色の悪くなる様子に、霖之助のまなざしも訝しげになってきた。

「………」
「し、知ってるのよ?! 私のパソコンはもっと装置が大きくって、画面も3Dだしっ!」

 結論は『知らない』。ガッカリと肩を落とした霖之助だったが、前々から知りたかったことについて尋ねる。
 カッパが開発したという、天狗の必需品。

「じゃあカメラの原理を教えてくれ」
「え、ええ! えっと…確かカメラ…こうゆう映像系は幾何学放射線技術学だから…えっと…えーっと……」
「どうしたんだい?」

 口篭る夢美に霖之助が尋ねると、えへへっと年相応の笑顔を見せながら言った。

「専門外だからちょっと…」
「………」
「待って!負荷式超音波技術学!? それとも可能性核立体技術学でいい?! カメラっていわば立体物質模写及び保存管理方法のことでしょっ!?」

 疑り深い目で黙ってしまった霖之助に、夢美は慌てて待ったをかけた。様々なハイブローな言葉の数々に霖之助は首を傾げることしかできない。否、霖之助にはハイブロー[高い知識]といよりただ単に意味不明の言葉を放っているようにしか思えなかった。
 まず、天狗のカメラは夢美の言っているような最新式未来型高性能カメラではない。
 霖之助はひとしきり夢美の話を聞いた後、小さくため息を吐いた。

「…もういい。どうせウソなんだろう? 時々いるんだ。どこかから手に入れた知識で自慢してくる輩が…」
「やだ!そんなつもりじゃ…!」
「ご来店ありがとう。それじゃあ」
「やーんっ」




18歳が大学教授になれるご時勢で、結界を越えることのできる船を作り出せるんだもん。きっと機械も最先端でしょ。
まぁ夢美たちが来た世界は外の世界は外の世界でも“平行世界”だもんね!







ちゆりと霖之助

「お邪魔するぜー」

 カランカランと乱暴に扉のカウベルが鳴る。
 手荒な扉の開け閉めと、独特の言葉遣いに、読んでいた本を閉じて霖之助は言った。

「魔理沙。入るときはもう少し扉を……っと!すまない人違いだった」

 白黒魔法使いだと思っていた少女は、水色と白が眩しいセーラーを着た少女だった。
 がさつ極まりない魔理沙と間違えたことに申し訳ない気持ちになったが、少女は魔理沙の名に反応した。

「魔理沙? 私魔理沙と間違えられたの?」
「なんだ魔理沙の知り合いか、それは更に失礼だったね」
「魔理沙に失礼なんじゃないか?今の」

 力なく笑う少女を他所に、霖之助はさも真面目に「本当のことだよ」と言った。
 そんな霖之助の言葉がおかしいのか、少女・ちゆりはケタケタと笑う。

「しっかし魔理沙かぁ…。なんか気味悪く笑ってた記憶しかないぜ」

 霖之助は興味なさそうに「そうかい」と言った。
 魔理沙を思い出して笑ったのか、今の霖之助に笑ったのかは定かではないが、楽しげにちゆりは笑う。
 目に涙を溜めるほどひとしきり笑ったちゆりは、香霖堂の隅に積んであった新聞を見て思い出したように尋ねた。

「あっと…急で悪いんだけど今って何年?」
「確か今は第124季だが…」
「あっちゃぁ。ご主人様ったら可能性空間移動時間間違えてるぜ…」
「?」
「いや、何でもないぜ」

 頭を押さえて悩んだと思ったら、すぐに何事もなかったかのように笑う。
 そんなちゆりに霖之助は誰かを思い出させた。

「しかし…なんとなく似ているような気がするよ」
「え?」
「君と魔理沙さ。友達をしてもらっているおかげかな」

 ひらりとセーラーの襟が揺れるのが、魔理沙の帽子のフリルが揺れるのと重なった。
 魔理沙を思い出す霖之助の目が、自分を見ていないと明らかに分かった。
 ちゆりにはそれがひどく寂しく、なぜか切なく感じた。

「……なんだか、貴方に別の人物と私を比べられるとなんだか寂しく思えるのはなんでだろうな?」
「え? 今何か言ったかい?」

 扉を開きながら言ったちゆりの言葉は小さすぎて霖之助の耳に入ることはなかった。
 しかし、ちゆりは何事もなかったように眩しい笑顔を霖之助に向ける。

「いんや。来る時代を間違えたから帰るぜ。またここに来たら…来れたら来るよ」
「ああ、また来たらいい」

 意味深な言葉を他所に、霖之助は疑うことなくちゆりに手を振る。
 それが嬉しいのか、ちゆりは満面の笑みを浮かべながら手を振った。
 口から出た言葉は「さよなら」ではない。

「またな」

 今度はちゃんと自分を見てもらうように。




誰にでも、誰かと比べられるのは嫌だよね。







神綺と霖之助

「ごめんください」

 キョロキョロと動く目線と同じように頭の上で結われたサイドテールが揺れる。
 香霖堂の扉を開けた女性は、明らかに何かを探していた。

「いらっしゃい。何をお求めで?」
「あら、ここはお店だったの?単なるあばら家かと…」
「あばら家に『ごめんください』と挨拶したのかい?」
「いいえ? もしかしたらここがあの子の家かもって思って…。そうよね。あの子がこんなゴミ屋敷に住むはずないわね」
「さっきから酷い言い草だね…」
「少し道に迷ってしまったの。ちょっと尋ねてもいいかしら」
「………まぁいいけどね」
「この森に人形師がいると思うんだけど…どこにいるか教えてくれる?」
「人形師…アリス・マーガトロイドさんだね」
「ええ!その子!」

 女性の顔がパッと明るくなった。
 それを見て霖之助は思った。

(もしかしたらアリスに人形の注文かもしれない。アリスは常連だ。いいこと言って印象を良くしておこう…)

「いやぁ、あの人形師はとても腕がいい人形師だ」

 先ほどまで引きつっていた顔とは全く違う笑顔で答えた霖之助に女性は思った。

(何かしら突然…そんなのアリスちゃんだから当たり前じゃない…さては私がアリスちゃんのお母さんってことに気付いてポイント稼ぎ?!この店主さん…アリスちゃんにホの字なのね!!ここは、どれだけアリスちゃんに愛があるか試させてもらうわ!)

「でもねぇ…あの子少しネクラだから…お友達ができるか不安よね…」

 頬に手を添えながら、不安そうに呟いた言葉に霖之助は内心焦った。

(すでにネクラという印象が!!まずい!アリスは腕はいいが確かにネクラだ!そんなことはないとウソでも誤魔化さないと…!)

「いやいや!ネクラだなんてそんな!彼女には友達が沢山いるんですよ。図書館のネクラや、少々曲がったモノクロ魔法使いとか…!」

 ウソでも『素敵な魔法使い』や『明るい図書館管理員』などとは言えず少々回りくどい言い回しになってしまったのが反省点である。そのせいとは言えないが、霖之助の思惑など分かるはずのない女性には訝しげに思われてしまった。

(なんだか違和感のある言い回しだけど、とりあえずアリスちゃんを立てているいるのが分かるから3ポイントあげるわ)

「よく見てらっしゃいますのね。彼女の作品…もしかして買ったことおありで?」

 探るような女性の目に、霖之助はウソをついているのがばれてしまったのかと慌てた。商品(人形)を買いに来たのだ。周りの評価が気になるのも頷ける。そう考えてしまったのだ。

(うっ…正直買ったことはない…でも糸がないのに動く人形にはとても興味がある…ということを伝えておけばいいだろうか…)

「あの人形は糸がないのに彼女の言うとおりに動く…それはとても力があるという事実だと思うんだ」

 とりあえずあたりさわりないことを言ったつもりの霖之助だったが、それはマイナスの評価を受けてしまうことになる。

(もうっ!アリスちゃんに力があるのは十分分かっていることよ!しつこいから-1ポイントだわ!)

「でもあの子…力があっても、いい出会いに恵まれないみたいで…」

 女性にとって“いい出会い”は伴侶の意味である。が、この女性はアリスの客だと思っている霖之助にとっては“いい出会い”=“いい友達”の意味にとってしまった。

(ん? 友達がいるというのは話したはず…なんでまた…。このヒトの見つめる先…魔理沙と霊夢(と僕)の写真か…。もしかして知り合いか?)

「いやいや…アリスは生涯を連れ添ってもおかしくないヒトと知り合ってますよ」

 偶然女性の視線の先に魔理沙、霊夢、霖之助の3人が写った写真があった。しかし、女性はその写真を他意なく見ていたに過ぎず、霖之助のいらぬ一言に反応した。

(え…?それって…アリスちゃんにもう既に彼氏がいるっていうこと?!初耳だわ!!)

「だっだれなのっ?!」

 身を乗り出して聞き出す女性に半ば面倒と思いながら、相手の思考を読み取ろうと思案した。

(なんだ…?すごい食いつきようだが…。もしかして魔理沙と霊夢に何かされたヒトなのかもしれないな。それなら2人の名前を出さない方がいいかもしれない。ここは視線の先の人物っていうことを意味して…)

「目の前にいるじゃないか」

 女性はその言葉に大いに驚いた。

(ななななな!!店主さんがアリスちゃんの彼氏ですって!?しかも生涯を連れ添って?!こ、これは…!!)

「貴方にあの子の何が分かるって言うの?!」

 女性のまなざしは娘を嫁に出す父親のそれだった。しかし、霖之助にその目の意図がつかめるはずもなく、女性の熱気に誘われるように熱くなることしかできなかった。

(?! なぜ怒られるんだ? やっぱり魔理沙と霊夢の友達っていうのがいい印象を受けなかったのか?! いや…あの2人に悪いことはない。少々クセがあるだけだ。そこのところをちゃんと説明しなければ…!!)

「彼女は本当に素晴らしい人物だ!彼女の選んだ人物を貴女は疑うというのかい?!」
「!!! それもそうね…。なら…!アリスちゃんを幸せにできるという自信はあるの?!」
「もちろんだ!!」

(魔理沙や霊夢やその他の友人に…!!)
(この店主…!!本気なのね!!)

「………」

 二人して黙ったままにらみ合う。
 弾幕ごっこにも似た真剣な戦いは、女性…神綺の不敵な笑みによって幕を閉じた。
 どこか諦めた、そして認めたような顔。その様子に霖之助も満足していた。
 やっとアリスの商品(人形)のよいところを認めてくれた、と…。

「ふっ…貴方の想い…しかと見届かせてもらったわ…。あの子を幸せにして頂戴ね…」
「……」

 黙ったまま深く頷く霖之助に、母親の笑みを浮かべ神綺は扉に手をかけた。

「じゃあ…機会があればまた来るわ…」



 出て行った神綺、香霖堂に残った霖之助共々、ふと我に返って呟いた。

「あれ…?私アリスちゃんの家を聞こうと思ったのに…」 
「一体あのヒトが言いたかったことはなんだったんだ…?」




アンジャッシュ思いつけないです…。分かりにくくて申し訳ないです…。
お前にあの子の何が分かる!って大きなワンちゃんがどこぞの映画で言っていたような気がするー。
【追記】色見にくくてすんません。。







アリス×霖之助?

神綺がアリスの顔見たさで訪問するのは初めてかもしれない。
突然の訪問にそれは驚いたアリスだったが、すぐに母子と関係を懐かしく思い昔の話に花を咲かせていた。

テーブルを囲み自分好みの紅茶を母に勧める。
事前に来ると分かっていれば、お茶菓子も特別なものを買っていたものを、普段常備している簡易的な茶菓子しか出せないことをアリスは静かに後悔していた。
一口紅茶を啜ると、ニヤニヤと口端を上げる母の顔が見える。

「そういえばアリスちゃん」
「何?お母さん」
「古道具屋の店主さんとはイイ感じ?」

ブッ!!

何がどうしてそんな会話を言い出すのかが理解できなくて思わず口に含んでいた紅茶を派手に噴き出した。

「何言い出すのよ!イイ感じとかそんなのないから!」
「あらー?でも店主さんはそんな感じって言ってたのよ?」
「えっ…。ってちがう!それは多分顧客としてよ。常連とは言わなくとも度々モノを買いに行くしね」

一瞬戸惑ったものの、フンッとそっぽを向いて神綺の言うことを否定する。

「えー?でも店主さんは常連って」
「あの人が…? じゃなくて! あの店はあんまり客と言う客が来ないから感覚が麻痺してるのよ」

アリスの頭の中で霖之助の顔がちらつく。
次の瞬間少しでも本当だと思った自分を恥じて、遠い目をしながら霖之助が思っているだろう自分の印象を蔑んだ。

「でも店主さんのアリスちゃんを思い出す目…あれは確実にアリね!!」
「アリって…まさか…。(ブンブンッ) お母さんは考えすぎよ。っていうか妄想しすぎなのよ」

ときめいた胸の鼓動を否定するように頭を乱暴に振ると、自分を惑わせた神綺を否む。

「そう? でもね、アリスちゃん。覚えておいて? いつ何時、目の前のヒトの思い(ベクトル)が自分に向くかなんて、いくら神様の私だって分からないことなのよ? 案外店主さんってば押せば転がってくるかも知れないじゃない♪」
「そんな……っ騙されるな私!! もうっ!私の顔見たら満足なんでしょ!さっさと帰って頂戴!」

アリスは自分と霖之助が寄り添う姿を思い浮かべた。
そしてハッと自分がまんまと神綺の口車に乗せられていることに気づくと、気恥かしさからか神綺を追い出そうと帰宅命令を出した。
が、そんなアリスを見て神綺をニマニマと意地の悪い笑みを浮かべて言った。

「やんっ!アリスちゃんたら照れ屋さんv」
「出てけーーー!!!」

思わずグリモワールを開きそうになった。


* * *


「はい、これが注文の糸と布。あとコレはいつも来てくれる君にサービスだ」
「あ、ありがとう…」

あれから数日後、人形作りのために注文した糸と布を取りにきたアリスに霖之助は小さなクマの人形を“サービス”という名目で渡した。
素直に受け取るアリスだったが…

(別にお母さんの言葉なんか気にしてないけど…ちょっと意識しちゃうじゃない…)

と、小さな意識変化をしていたそうな。



本当はね、この書き下ろしで漫画を描こうとしたんだよ。
そしたらsaiの試用期間すぎちゃって…。。あー…やっぱ買おうかなぁ…。。

【追記】買っちゃったよ☆あー…私だめだぁ